今回は「キャベツに付着した虫を発見してコンベアを止める」に引き続き、欠けた錠剤を検出してコンベアを止めるという内容です。
メカニカルリレーで100VのON/OFFを行うとかなり大きな電磁ノイズが発生することが分かったため、ソリッドステートリレーに変更して検査をしました。
「DeepSkyから100V電源のON/OFFを行う」の配線にパトライトを追加した仕組みです。欠けた錠剤(不良品)が流れてきたときに赤色のライトとブザーで知らせ、コンベアを止める仕組みです。良品が流れ続けると、緑色のライトが点灯しコンベアも動き続けます。
非常にシンプルかつ実用的な仕組みなのでぜひお試し下さい。
製作期間:1日
材料費:2万円
材料・部品
- ソリッドステートリレー[AQA211VL]
- DC24Vアダプタ [秋月電子 / GF18-US24075T]
- コンセント [パナソニック / WH2163KWP]
- 木板 300 x 200 x 12
- ブザー[秋月電子 / PB10-Z338R]
- 木ビス 3.5 x 12:10本程度
- 木ビス 2.6 x 12:2本
- Y型圧着端子 1.25Y-3.5:4個
- 圧着端子用絶縁キャップ:2個
- パトライト[ミスミ / LR5-302WJNW-RYG]
工具・備品
- PC[マウスコンピューター/G-Tune, Corei9, 16GB RAM, RTX 2070 SUPER]
- 画像処理ソフト[スカイロジック/DeepSky DS100K]
- IOユニット[スカイロジック/EI-ITIO-T01]
- 130万画素カメラ[Daheng/MER-133-54u3c]
- 25mm レンズ[M2514-MP2]
- カメラスタンド(アルミフレーム)
工具・備品計:90万円程度
作り方
配線
下図のように配線します。Intelligent I/OからのNG出力がONになるとブザーが鳴り、OK出力がONになるとソリッドステートリレーがON(100Vが供給される)になる仕組みです。パトライトはOK出力が緑色ライト、NG出力は赤色ライト、BUSYは黄色ライトになります。今回BUSY(黄色)は検査中であることを示します。
詳細は「DeepSkyから100V電源のON/OFFを行う」をご覧ください。
配線図
カメラ位置とピント、絞りの調節
コンベア上の錠剤を撮影するため、真上にカメラを設置します。今回は社内のアルミフレームで組んだカメラスタンドを使用しました。アルミフレームを組み合わせた非常にシンプルなものです。絞りやピントについては記事「絞りの役割」を参考にして下さい。
- アルミフレーム:ミスミ5シリーズ、40mm角
- 直角ブラケット:5シリーズ(溝幅6mm)押出厚型ブラケット
- 六角穴付ボルト:M5, 10mm
- フレームナット:5シリーズアルミフレーム用後入れバネナット
撮影・アノテーション・学習
DeepSkyの動画マニュアルに従って欠けた錠剤を含めて10~100箇所程度位置を変えながら撮影します。その後アノテーション(欠け部分を囲んで検出対象をソフトに教える作業)を行い、学習を実行します。アノテーションの際にはアノテーション忘れ(欠けを囲い忘れる)に注意して下さい。検出率が下がってしまう場合があります。撮影とアノテーションについては記事「プラキャップ黒ブツの検出とコンベアからの排出」も参考にして下さい。
アノテーションの画面
今回の学習は教師画像10枚で行います。今回は学習回数(ステップ)を1,000回で学習させました。Lossの値が 0.1未満で安定するまで学習を続けて下さい。今回使用したPCでは1,000回学習するのに5~10分程度かかっています。
学習「Loss」グラフ
撮り溜めた画像でテスト
学習が終わったら教師画像を含む、撮り溜めた画像を読み込んで欠け部分が認識されるかどうか確認します(「設定」→「ファイルから」ボタンで画像を読み込み、「<<」「>>」ボタンで前/次の画像の検出を確認していくことができます。)。認識率が低ければ認識点数を調節したり、再学習を実行したりして欠け部分が確実に検出できるようにしてください。問題なければ実際にコンベアを流してテストします。
I/Oユニットを制御するための設定
DeepSkyのマニュアルに従い、I/Oユニットを制御するためのCOMポート設定を行って下さい。また、「撮影形式」を「連続撮影」にします。「インターバル」は0に設定します。
COMポート設定
連続撮影設定
コンベアを流してテスト
「検査/監視開始(F5)」をクリックします。
先ほど「連続撮影」モードに設定したので、DeepSkyは欠け部分を検出するための画像処理を繰り返し行います。IOユニットのBUSYが点滅、OK/NGどちらかが点灯することを確認して下さい。
I/OユニットのLED
まず、欠けがない状態(良品のみ)でコンベアが動き、緑色ライトが点灯し、ブザーが鳴らないことを確認します。
良品は検出されずにコンベアは流れていき、欠けた錠剤(不良品)を置いて検査をすると、欠け部分を検出してNG出力となり、赤色ライトが点灯・ブザーが鳴るとともにコンベアが停止します。
追学習と調整
実際に運用している中で見逃す欠け部分があったり、欠けではないものを誤検出したりすることがあるかもしれません。その場合、追学習によって見逃した欠けを覚えさせます。また、異なる形の欠けやパターンなどを学習させることにより、検出対象を増やすこともできます。
まとめ
定点カメラで連続的にコンベア上を検査することで「NG品をその先に流さない」シンプルな仕組みを作りました。用途は様々で、金属部品の打痕検査等でもご利用頂けます。
今後もコンベアの止まるシリーズを掲載予定ですので参考にしてみてください。