絞りは目でいえば虹彩(茶色目)の役割を果たし、カメラのイメージセンサーに入る光の量を調節するものですが、同時に被写界深度やカメラの露光時間にも影響します。今回は被写界深度と露光時間について検証したいと思います。
被写界深度
被写界深度とはレンズのフォーカスが合う前後方向の深さのことを言います。下の図は絞り値 f1.4(開いた状態)とf16(絞った状態)でフォーカスが合う深さがどれだけ違うかについて調べるために実際に高さのある部品(リレー)を上部から撮影した物です。フォーカスは天面に合わせていますが、f16(右側)の方は数十ミリ下の端子台までピントが合っています。
撮影条件は下記の通りです。
- レンズ焦点距離:35mm
- ワーキングディスタンス(WD、レンズ先端から部品までの距離):300mm
- 部品高さ:70mm
この点だけ捉えると絞りは絞った方がピントが合う範囲が広くてよさそうなのですが、デメリットもあります。それが次の露光時間です。
露光時間
上の被写界深度の比較写真は同等の明るさで撮影されていますが、実は露光時間を大きく変えています。絞りを絞ることにより入ってくる光の量が減るため、その分露光時間を長くしなければ同等の明るさにならないためです。上記の撮影条件に露光時間を追加した場合、下記のようになります。
- f1.4の時の露光時間:12ms
- f16 の時の露光時間:800ms
実に67倍の違いがあります。12msであれば移動体でもそれなりに撮影できますが、800msでは完全停止したものでない限りブレてしまってまともな像が撮影できません。
このように絞りを絞った場合も開いた場合もそれぞれメリットとデメリットがあります。そのため、スカイロジックでは、まずf5.6くらいを目安としてお勧めしています。平板など被写界深度がそれほど必要ないものなら絞りをもっと開いて露光時間を短く(被写界深度を浅く)も問題ありませんし、完全停止したものであれば絞りをより絞って被写界深度を深く(露光時間を長く)することができます。
被写界深度を深くしながら露光時間を短くする方法
最後に、両方のメリットを極力大きく、デメリットを極力小さくする方法について説明します。
- 光を補う
絞りを絞ることによりイメージセンサーに入る光量は減りますが、より強い照明を使うことによって露光時間を最低限に抑えることができます。また照明の位置や角度を工夫することで欠陥をより見つけやすくすることができるという別のメリットも生まれます。 - ワーキングディスタンスを長く取る
被写界深度はワーキングディスタンスに比例します。分かりやすい例としては100m先の建物を撮影する時には1m程度距離が前後してもピントがボケることはありませんが、3m先の物体を撮影する時には1mの距離差はピンボケにつながります。今回の例のような高さのある物体も、より高いところから距離を置いて撮影することにより同じf値でも被写界深度をより深くすることができます。