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絞りやフォーカスを調節できるタイプのレンズには画角(撮影範囲)に関係する「焦点距離」という値があります。レンズの仕様を表す場合、一般的にf1.4/12mm のように開放時の絞り値と焦点距離をセットで表しますが、このことから「焦点距離」が重要な仕様であることが分かると思います。

焦点距離と画角の関係。焦点距離が長くなると画角が狭くなります。

焦点距離が短いものではより広い範囲を、焦点距離が長いものではより狭い範囲を(拡大して)撮影することができます。ここで、焦点距離はレンズと撮影対象との距離(フォーカスが合う距離)ではないことに注意して下さい。焦点距離はあくまでも撮影される画角(撮影範囲)を示したものです。焦点距離についての説明は Wikiペディア含め様々な参考サイトがありますので、ここでは実用に絞って説明します。下の表は 1/3インチの受光センサーを持つ Daheng製MER-133-54u3cを使った時の撮影範囲です。

↓WD※ / 焦点距離 →6mm12mm24mm
30cm24cm12cm6cm
60cm48cm24cm12cm
90cm72cm36cm18cm
1/3インチカメラでの撮影範囲(横方向) ※WD: レンズから撮影対象までの距離

ここで次の点に気がつくと思います。

  • 同じWD(レンズから撮影対象までの距離)であれば、焦点距離が2倍になれば撮影範囲は 1/2 になる
  • 同じ焦点距離であれば、WDが2倍になると撮影範囲は2倍になる

このような比例関係があるので、WDが上記以外のものでも、異なる焦点距離のレンズのものでも撮影範囲がどの程度になるか予想がつきます。大雑把な基準として「6mmレンズを使うとWDと撮影範囲が大体同じになる」「撮影範囲を半分にしたければ焦点距離を2倍にする」という風に思って頂くと簡単です。

撮影範囲についてもう一点、注意が必要なことがあります。それはセンサーサイズです。「センサーサイズの大小」という記事で紹介したように撮影範囲はセンサーサイズにも比例します。例えば、上の表のように 1/3インチのセンサーで WD=30cm, 焦点距離=6mm で撮影範囲は24cmですが、1/3インチより1.333倍大きな 1/2インチのセンサーでは 1.333倍の 32cm となります。

このあたりのシミュレーションについてはCASIO様が運営する「高精度計算サイト」が便利です。カメラのセンサーサイズ、被写体までの距離、撮影したい範囲が決まっていればレンズの焦点距離をシミュレーションで決められます。

最後に、同じ撮影範囲なら 1) 距離(WD)を取って焦点距離の長いレンズを選ぶか、それとも 2) 距離を縮めて焦点距離の短いレンズを選ぶか(上の表の視野範囲 「24cm」の部分)の判断ですが、どちらでも良いのであれば距離を取って焦点距離の長いレンズを選んだ方が無難です。なぜなら焦点距離の短いレンズ(目安としては8mm以下のレンズ)は魚眼レンズのような効果が出てしまうことと、カメラを真上に設置して撮影しても画角の周辺部では斜めに撮影されてしまうことがあるためです。

例:ヒートシンク

上のようなヒートシンクを焦点距離 2.8mmと 35mm で撮影した物を比較したのが下の画像です。2.8mmのレンズでは周辺に樽型の歪みが発生しているだけでなく、周辺部の柱を真上からではなく斜めから撮影したような画像になっています。

左:Fujinon TF2.8DA f2.2/2.8mm、右:Computar M3514-MP f1.4/35mm

もちろん、魚眼効果があるから悪いという訳ではなく、魚眼レンズの性質をあえて利用して円筒の内壁を一度に撮影する方法もあります。用途に合わせて最適な焦点距離を選定して下さい。

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