ここでは様々な照明の種類と性質、主な用途について書きたいと思います。用途に合わせて最適な照明を選んでください。
バー照明
広く使われる照明です。下図のように両側から斜めに光を当てるように取り付けられる場合が多いです。また、バー照明でも下の照明のようにLEDの前に拡散板が付いているものとLEDがむき出しになっているものがあります。拡散板が付いているものはより均一、ソフトに光を当てることができます。一方、LEDがむき出しになっているものは正面方向に指向性を持った光線が出るため、狭い範囲に強く光を当てたい場合に適しています。LEDがむき出しのものは光源が製品に反射するとそのツブツブがはっきりと映ってしまうのでそれが判定に影響しないように注意する必要があります。
用途としては広く、数センチから数十センチ程度の電子基板やプラスチックなどに汎用的に使われます。単純に24Vを供給して点灯させるだけのものから、画像処理用に調光ができるものまで様々あります。画像検査用途ではLEDがよく使われますが、光源の安定性が判定に影響を及ぼすような厳密な検査でなければ読書用のインバーター蛍光灯でも問題ないと思います。ただ、インバーター蛍光灯でない蛍光灯を使う場合は注意が必要です。蛍光灯は交流電源によって50Hzまたは60Hzで点滅しているので、カメラの露光時間を短くしたときに画像上に縞が出たり、極端に明るさが変化したりすることがあります。
リング照明
リング照明も画像検査用としてよく使われます。リング照明はカメラのレンズを囲むように取り付けられるのが一般的で、カメラとほぼ同じ方向から製品に照明を当てることができます。
用途としては、リングの径よりも小さな視野のものを撮影する場合に使われることが多く、例えば電子基板上の部品を撮影する時に使われます。
注意点としては、カメラとほぼ同じ方向から光を当てるため、検査対象が光沢のあるものの場合LEDの光源がそのままカメラに反射して被写体がハレーションを起こしてしまうことが挙げられます。一方で、この性質を利用してメッキなどの光沢度をチェックすることもできます。光沢度が高いメッキではLEDのツブツブがはっきりと映り、曇ったメッキではLEDのツブツブがぼやけるため、この違いを画像処理によって判定します。汎用画像検査ソフトEasyInspectorでは「傷ブツ検査」の機能を使ってツブツブの度合いを判定できます。
また、カメラのレンズを囲むように付ける以外の方法もあります。例えば円柱状の金属になるべく均一に照明を当てて、その円柱側面のキズなどを検出したい場合、円柱を囲むようにリング照明を配置します。
下の図はカメラと同じ方向からリング照明を当てた場合と、円柱上方から同じリング照明を当てた時の見え方の比較です。正面から光を当てると真ん中の一部だけ光りますが、上方から当てた場合は全体的に均一に光ります。
これによってネジのダコンなどを効率よく検出することができるようになります。下の図はAI画像検査ソフトDeepSkyによってネジ山のダコンを検出した例です。円柱の上方からリング照明を当てて撮影しています。
このようにリング照明は様々な使い方ができ、径も様々なバリエーションがあります。検討用に一つ持っていると便利です。
補足:社内でリング照明として結構重宝されているのがLEDアームライトです。アームがフレキシブルなため取り付けや位置決めが簡単です。この製品は元々小さなものにまんべんなく照明を当てて、中央の凸レンズで拡大して人が目視するためのものです。リング照明として使うために中央の凸レンズは取り外して使っています。
オーム電機 エルズームLEDアームライト ルーペ付 ホワイト OAL-L8066-W
これもリング照明ですが、役割としては別物と考えてよいのではないかと思います。ふつうのリング照明との違いはLEDの向きです。ローアングルリング照明はLEDの向きが円の中心に向かっています。そのためローアングルリング照明はカメラのレンズの周りに取り付けるのではなく、下の図のように検査品の周りに取り付けるのが一般的です。
上の図で黄色はLEDを示しています。一般的なリング照明はLEDが下向きに、ローアングルリング照明は円の中心方向を向いています。青い矢印で示したように一般的なリング照明はカメラがLEDの光源反射を受けやすいのに対してローアングルの場合は反射光が逆方向に抜けるため反射光がカメラに入射するのを低減することができます。
ローアングル照明使うとキズやホコリを浮かび上がらせたり、凹凸を強調したりすることができます。下の写真は透明プラスチック上の微小なホコリや傷をローアングルリング照明によって浮かび上がらせたものです。
ローアングルリング照明でキズ、ホコリを浮かび上がらせた状態
このようにローアングルリング照明は物体表面のキズや異物を強調することができます。この例はプラスチックですが、金属のキズにも同様に効果を発揮します。
下の画像は100円玉を撮影して比較したものです。ローアングルリング照明は凹凸を強調する効果があるため、このような刻印された文字も明瞭に撮影することができます。
下の画像は金属のピン曲りを発見するためにバックライトを使用した例です。
バックライトを使って丸物を撮影する場合、バックライトから距離を置くようにしてください。バックライトとの距離が近いと光が丸物の側面に反射してエッジのコントラストが落ちてしまいます。下の画像はバックライトと物体との距離によってエッジのコントラストが変わる実験を行ったものです。
左:バックライトの上に直置き、右:バックライトから150mm程度離れたガラス上に置いた状態
このように、バックライトは物体のエッジを強調させる用途で使うことが多いですが、ちょっと変わった使い方として透明体のキズや異常を確認するために使われることがあります。下の画像は小さなPET製のボトルを撮影したものです。右側が偏光板を通して撮影した画像ですが、バックライトのみの画像に比べてキズが強調されているのが分かると思います。また、製造時の応力のかかり方によって虹色に発色するのも特徴です。このように、偏光を使って透明体の欠陥の検出を行う場合があります。
偏光板は透明体(被検査物)を挟むように配置します。この状態で上から撮影すると上のような画像が得らえます。
偏光板の配置。下からバックライト、偏光板1、透明体(被検査物)、偏光板2。
今回の例では画像検査用のの調光可能なバックライトを使いましたが、もっと大判で安価なバックライトもあります。漫画や習字の手本をこの上に置き、透かしてなぞる、いわゆるトレーシングのためのものですが、大判で使い勝手が良いため社内では重宝されています。ただ、画像検査用バックライトのような高輝度ではなく、調光はできません。
トゥーマーカープロダクツ コミックマスタートレーサーLED A3サイズ
その他、バックライトコンベアというものもあります。移動させながら被検査物を透過光で撮影し、合否の判定を行うことができます。
同軸落射照明
ハーフミラーを使って、カメラと同じ光軸の落射光を作る照明です。
テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。
カメラと同じ光軸の照明を当てることによるメリットは、凹凸や表面粗さに対して敏感な画像を作りだせることです。下の画像は右上に打痕のあるボタン電池を室内光と同軸落射照明で撮影して比較したものです。
同軸落射照明を使うと凹凸の部分では反射光が戻らず黒く撮影されます。
このように凹凸のある部分は黒く撮影されるため、細かな傷や打痕が強調されます。同軸落射照明は「まっすぐ出た光が表面にまっすぐ当たった時だけ光が返ってくる」という性質を利用しています。
因みに、先ほどローアングルリング照明で撮影した100円玉を同軸落射照明で撮影すると下のような画像になります。細かな打痕がより良く見えています。このように、同軸落射照明は金属の表面の検査に多く使われます。
同軸落射照明をカメラ側に近づけるとより同軸性が強くなり、細かな凹凸に対してより敏感になる一方で、検査品のちょっとした傾きでも画像が真っ暗になってしまいます。逆に製品側に近づけると同軸性が弱くなりセッティングは簡単になりますが、細かな凹凸は無視されてしまいます。見つけたい打痕の凹凸度合いにより、同軸落射照明をどの位置に配置するかが決まってきます。
ドーム照明
同軸落射照明とは反対に、「凹凸は無視したい」「光は当てたいが光源の直接反射は避けたい」場合もあります。
よくある例としては電子基板のハンダです。ハンダはそれぞれの盛り上がり方が微妙に違う上、ギラつくため画像での判定に悪影響を及ぼすことが多いと言われています。例えばある製品では真っ白く光っていたハンダが、別の良品では真っ黒く写ってしまうということがあるため、安定した判定ができなくなるためです。このような違いを極力抑えて安定した画像を得るためにあるのがドーム照明です。
次の画像は同じ製品の半田面をリング照明で撮影した画像とドーム照明を使って撮影した画像を比較したものです。ドーム照明の方がよりベタッとした画になっていることが分かると思います。これにより、ハンダの量や状態に左右されにくい画像を得ることができます。